トラップ

暗い回廊の奥で激しい金属音と爆音が続いて響いた。
キンッ!バシー!!ドン!
「リディアン!そっちに行ったぞ!」
「まかせて!!」
リディアンの剣が魔物の首をはねた。
主を失った魔物の胴体は倒れて動かなくなった。
「うしろ!!」
リディアンから声をかけられて、脇の下から自分の後ろ
に目掛けて剣を突き刺すと、そこには魂の抜けた鎧武者が迫って
いた。胸を刺された鎧武者は力なく膝を落とした。

「たすかったよ・・・」
「私もね、お互い様・・」

二人は顔を見合わせて笑った。
頭の中で声が響く。
「この女のこと信用してるの?」
俺は心の中でつぶやいた。
「なんだ?やいてるのか?」
「・・・」
声は聞こえなくなった。
すると突然、倒したはずの鎧武者が爆発した!
俺はリディアンを、かばうように覆いかぶさった。
2人とも何とか爆風を逃れた。
気がつくと、リディアンの顔が目の前に・・・
目と目が合い、リディアンは顔を赤らめた。
彼女のこんな反応は始めてだった。
リディアンは一度目をそらしたが、真っ赤になった顔で
もう一度、真っ直ぐ、つぶらな瞳をこちらに向ける。
二人の顔が少しずつ近づいていく。
その時、リディアンは目の前から一瞬にして消え去った。
今、彼女が居たはずの床がなくなっており、
悲鳴が下の階から聞こえる。
「トラップか!?」
「リディアン!!大丈夫か?!」
遥か下まで続く暗闇に向けて声をかける。
しばらくして返答があった。
「多分・・・」「大丈夫よ・・・」
「そこで待ってろ!動くなよ!」
俺は下に向かう階段を探す為にその場を立ち去った。

漆黒の騎士

薄暗く湿気漂うダンジョンを奥へと歩くリディアンと俺
もうどれくらい日の光を拝んでいないだろう。
そんなことを考えながら歩いていた。その時、
前方から強烈な威圧感を発しながら近づいてくる者がいた。
頭から足の先まで黒ずくめの装備には
壮絶な戦いを予測できる。
相手に切りつけたときに浴びたであろう、返り血が所々に付着していた。
近づいてくる騎士に身構える2人。
その瞬間、黒き騎士から火球が放たれた。
2人は別々の方向へ飛び、何とか難を免れた。
火球が地面にぶつかり爆音をあげる。
時を置かず、漆黒の騎士は俺に向かって音速で間をつめる。
轟音と共に大剣が振り下ろされる。
受け流すのが精一杯だ。
リディアンが後ろから飛びかかる。
騎士は盾を振り回し、まるで後ろにも目が有るかのごとく、
盾でリディアンを正確にとらえる。
振り回された盾に弾き飛ばされ反対側の壁にたたきつけられた。
リディアンは気絶したようだ。
俺の頭の中で彼女が呪文を唱える。

「天空の神の御心に届け浄化の光を我に・・・」

俺と漆黒の騎士との間に目がくらむほどのまばゆい光が発生し、
騎士を吹き飛ばす。
よろめいた騎士の懐へ鋭く剣を突き刺す。
騎士は何かをつぶやきながら、よろめき倒れ絶命した。

何とか騎士を倒した俺はリディアンの傍らへ行き、
倒れている彼女を抱き上げる。
彼女は既に意識を取り戻していた。

「さっきの光は何?あなたの力なの?」
「まあ、そんなところかな」

リディアンは何とか立ち上がり、
何事も無かったかのように、歩き出す。
「礼くらいあっても・・・」と心の中でつぶやいた時
まるで聞こえたかのように、
「ありがとう・・」と一言
そして二人は歩き出した。

リディアン

暗闇の中手探りで2人は奥へと進んでいく。
前を歩いていくリディアンと名乗る女性に声をかけた
「どこまで行く気だ?」
「・・・・」
返事は無い。
頭の中で女性の声がした。
「彼女には、あまりかまわない方がいいわ」
「何故だ?」
「彼女から血の香りが常に漂ってるわ」
俺もそうさ・・・
リディアンが急にこちらへ振り返った。
「誰と話してるの?」
とぼけて、「俺、今何か言った?」
リディアンは不服そうな顔を一瞬したが、
「じゃあ、いいわ。別に気にしないし。」
2人はどんどん億へと進んでいった。

協闘

「危ない!!」
彼女に向かって叫びながら、彼女の背後に迫り来る何かにむかって剣を向ける。
その瞬間、その何かも剣を振りかぶった。
とてつもない速さで彼女の頭に向けて振り下ろされる斬撃を、かろうじて受け止めた。
「逃げるんだ!」
その言葉を発する前に、彼女の体は中を舞い、襲撃者の首を鋭い刃で一閃した。
何者かの首が地面に落ち、主を失った体は膝から崩れていった。
「なかなかやるな」
「あなたもね、」
「とりあえず、礼は言わないわ」「やつを倒したのは私だしね・・・」
なまいきな・・・口には出さなかった。今、倒れた者の後を追う訳にはいかなかった。
「じゃあな、元気で!」
俺は厄介な事に巻き込まれないように、この場を立ち去ろうとした。
すると彼女は直ぐ後ろをついてくるではないか。
「何だ?」
「ただ、目的地の方向が一緒なだけよ」
それ以上は、彼女は何も語らなかった。
やれやれ、ため息をついて再び歩き出す。
暗闇の中、二人の影は奥へと進んでいく・・・

休息

戦いに明け暮れてたどり着いた場所。いったい地下何階であろう?向こうから明かりが見える。
誰かいる?端整な顔立ちの女性が火を焚いて座っている。
銀色の長い髪に青い瞳。細い体には似合わない剣を装備している。
格好からすると戦士のようだ。
近づくと気配を察したのか身構え、剣を向ける。
「敵ではない!」両手を挙げて立ち止まった。
彼女も剣を下ろした。
「俺も休ませてもらっていいか?」
何も言わずにうなずいた。
腰を下ろし、しばらく奇妙な沈黙の時間が流れる。
「PIXだ。名前は?」
「リディアン・・・」
あまり、しゃべらない性格なのか、それとも招かざる状況なのか?
一時の時間が流れ、二人とも黙ったまま休息した。
その時、彼女の背後から何かが忍び寄る・・・

戦いの前

遠くから獣のような声が響いてくる。ここまで深い階を歩いてくると
外界の音は何も聞こえない筈。
ということは、この通路の先に人でない何かが潜んでいることになる。
剣を持つ腕が震えた。恐怖は無い。
以前の俺なら恐怖で死ぬほど震えていただろう。
しかし、今の俺が震えているのは、武者震いというより、
心の底から湧き上がる歓喜の震えだった。
もうあと一歩で、この角を曲がったら相手は居るであろう。
剣を構える。深呼吸を2度・・・
よしっ!
勢い良く走り出す。
しかし、角を曲がっても何も居ない・・・
すると、後ろの地面が盛り上がった。
自分の影の中から獣が現れる。
剣を振りかぶったが、時既に遅く剣がはじかれた。
乾いた音をたてて剣が転がり落ちた。
普通であれば死んでいたであろう、この瞬間も俺の中では
このスリルにわくわくしていた。
なかなかやるなっ!さあ来い!!
両こぶしを構えて向かい合う。


覚醒!!

「次は貴様か!!」
「かかって来い!」
挑発に乗るように
獣の姿をした敵が恐ろしいスピードで向かってくる。
「セイッヤー」
気合と共に常人の目には捕らえられない
一閃が獣をなぎ払った。
「今日は負ける気がしないな・・・」
10人ほど倒したところで、邪悪な気配が近づいてくることに
気がついた。
「次はあなたですか」
黒き禍々しいオーラを身にまとった騎士が音も無く近づいてくる。
「相手に不足なし!!」
「尋常に勝負!!」
剣を構えると同時に相手との距離を一瞬でつめる
すさまじい斬撃が空気を振るわせた。
勝負は一瞬でついていた。
「あぶなかった。もう一瞬遅れていたら・・・」
何とか勝ったが、まだ自分の未熟さが身にしみる勝負であった。
頭の中に彼女の声が響いた。
「覚醒したようね。」
「これを覚醒と呼ぶかは分からないが、心は晴れている」
今日はこのくらいで休むか。先は長い・・・

帰還

やっと帰ってきたぜ・・・長い間眠っていたようだ。
その間に筋力は落ちてしまったが、精神的なレベルは高くなったようだ。
それを証拠に今はとても、すがすがしい気分だ。
始まりはここからだな。
ええ、そうね。今のあなたなら、高みを目指せるわ。
君か、ありうがとう。
今までなら、頭の中に響く声に対しても必要以上に反応しているところだが、
逆に落ち着くようだ。
さてと、まずはなまった体を鍛えなおさなくてはな。
ええ、あなたなら出来るわ。
有難う。素直に受け取るよ。

準備

今日も探索を繰り返す毎日・・・
まあ、地道な活動が後に大きな力となるであろう。
おっ
クリスタルだ。
やっぱり、この階はクリスタルが良く出るな。
食料も。
まずは、力を蓄えて、後に備えるさ。

追走!!

背後で、ざわめきが起こった。
「何だ!?」
振り向きたい衝動に駆られたが、やめておくことにした。
きっと彼女だ・・・
振り向けば消えてしまいそうな儚い気配だからだ。
今度は前方、はるか彼方から強い気を感じる。
今は戦えるような状況ではない。
身を隠そう・・・
おっと、例の侍か、次にあったときは勝負させてもらおう。
今は駄目だ・・・
彼女の事も気になるしな。

さてと、今日は休むか。
まて、強大な気を感じる!!この禍々しい気は以前感じたことがある。
まずいっ!!
この場は立ち去ろう。こんな時もあるさ。

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